カナダ最北端は甘くない

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寝たんだか寝てないんだかよく分からない状態で起きる.今日は市内観光に行くので,11時前に集合ということになっている.昨日「明日は晴れますよ」と言われていたので,期待しながらカーテンを開ける. …….雪だ….雪が降っている….この時点で2人の今日一日の活力がすべて失われた.

ホテルのカフェで朝食を取りロビーに集まる.「カナダの天気予報は日本より広い範囲でやるので,こういうこともあるんですよ.でも明日は晴れるから大丈夫です」と言われたって,信用できるわけがない.

市内観光といっても小さな所なので,そう見所が多いわけではない.まずはアイスロードという所に行く.行ってみるとただの道路だ.雪が大量に積もっているので道路かどうかも怪しいが,一応轍があるので道路なのだろう.しかしそこの雪をどけると,下から出てくるのはなんと氷.実はこの道路,凍った湖なのだ.しかもちゃんとした公共の道路で,車重制限とかもある.これは冬季限定の道路で,氷が厚くなれば車重の上限も大きくなっていくという仕組み.

ここで,イエローナイフでの犬の散歩風景というものに出会う.横着なことに犬を車から降ろして,人は車で先に行く.そしてそれを犬が走って追いかけるというものだ.ここら辺では普通らしい.氷の道路にしても犬の散歩にしても,寒い所ならではだ.

次にブッシュパイロットという,この地の発展に貢献したパイロットを讃えるモニュメントに行くのだが,途中の坂を車が上りきらない.雪のため,タイヤが空回りしてしまった.バックで戻って,助走をつけて上り直す.雪道の運転は大変だ.ガイドさんの話じゃ,地元の人でも時々事故るらしい.だからお客を乗せて運転する場合は,日本の一種のように別の免許がいるそうだ.ブッシュパイロットは小山のような展望台になっていた.上ってみるも周りは一面雪景色.「あれが世界で11番目に大きい湖です」と言われても,どこからどこまでが湖だか分からない.

バンの中でイエローナイフに生息する鳥の話を聞く.冬に見ることができる鳥は,黒い鳥と白い鳥の2種類.黒い鳥は raven.日本で言う大烏だ.だからイエローナイフで飼われている黒い犬や猫の半数は,ravenという名前なんだそうだ.白い鳥は,ptarmigan.なんと日本じゃ天然記念物の雷鳥だ.ここではそこら中にいるらしい.しかし白い犬や猫にはptarmiganではなく,イヌイットの言葉で白熊を意味するナヌックという名前を付けることが多いらしい.そんな話を聞いていると,市内観光の終点,Visitors Centreに着く.

バンから降りると,面白いことに気がついた.なんとナンバープレートが白熊の形をしているのだ.カナダ広しといえど,ナンバープレートが四角じゃないのはここだけだそうだ.世界中探しても,四角じゃないナンバープレートは少ないだろう.とても珍しい.

午後は犬ぞりの予定だったが,この天気で明日に変更.ということで午後はフリー.

市内観光の途中で見かけたマクドナルドへ行くことにする.なぜならそこはカナダ最北端のマック.これは行かねばならない.湖を横切れば30分ぐらいで着くと言われたが,雪が積もりすぎてこのルートは却下.歩くと膝の上まで雪に埋もれてしまう.そこで湖の周りを囲むようにして走る,散歩道を通ることにする.雪の降る中,マック目指して歩く.

防寒靴が,鉛入りの靴のように重い.30分歩いても全然見あたらない.安易な気持ちで行くことにしたのだが,実は場所を知らない.しかしそんなことを言ったら,絶対かったまはキレるのでただひたすら知ったかぶりをして歩く.小さい街だし大通りを歩けば見つかるだろうと,なめすぎた.雪道に加えて,重い防寒着を着ているので歩みも遅い.マックの看板が見えた瞬間はなんとも言えずほっとした.結局ここまで,1時間もかかった.中で食事をするも,2人とも疲れきって,ぐたー.

帰る途中,通りすがりのスーパーで新種のFisherman's Friendを発見.もちろん即購入.これだけいろんな国で売っているのに,なぜ日本だけはあまり売ってないのか不思議だ.他の店で今宵のドリンクfruitopiaのfruit integration味を買う.このジュース一本買うのにC$100札を出したら,店員はおつりを出すのに一苦労.アメリカでもそうだったが,なぜこうも1万円程度のお札で困ってしまうのだろう.そんなに困るくらいなら,最初から作らなければいいのに….ちなみにfruitopiaのお味はきついの一言だった.

ホテルに帰って一休みしてから,今夜もオーロラ鑑賞.集合時間に遅れないようにと早めに準備を始めたのに,準備の半ばで呼び出しの電話がかかってきた.なぜだ?と思ったら,どうやら部屋の時計が遅れているらしい.やられた.

バンの中で「明日からsunnyだった天気予報が,今夜からclearに変わりました」と言われるもあまり天気予報は信じないことにしている.湖に着いて早々,どうせ今夜も見えないだろうと2人でキャビン直行.暖かい室内でくつろいでいるが,オーロラ講座をやるというのでテントに呼ばれる.1時間ぐらいでそれが終わると,キャビンに即行戻る.全くやる気なし.雪が降っているのに外に出てられるかとかったまとティータイム.1時間ぐらいすると他の客が誰もいなくなり,ツアー会社の人と私達だけになる.ちょっと居づらくなったので,しょうがなく外に出る.雪が降っているので,フラッシュをたいて写真を撮るとキラキラ反射して面白い.あとは湖の端まで歩いたりして時間をつぶす.

12:30をすぎると雪が少し小降りになってきて星も少し見え始めた.少し晴れてきたなぁと思いながらぼけーっと空を見てると,変な雲に気づく.少し緑がかかっているなぁと思っていると,それがだんだんと広がっくる.なんと,オーロラじゃないか!色も薄く儚げな感じだが,確かにオーロラだ.周りもだんだんと気付き,歓声があがる.よかった.やっと見られた.

しかし,こうなってくると隣にある満月がとてもじゃまだ.さっきのオーロラ講座では満月が出ても関係ないと言っていたが,大嘘だ.月が明るすぎて,月の周りがよく見えない.だが,いったん出始めると次々に出てくる.全体的に弱い気がするが,それでも時折光が強まるときなどとても美しい.こうなってくると,もう感動ものである.

今までは写真でしか見たことなかったが,実物はとてもよく動く.動きとしてはカーテンが風に揺れる感じがとても似てるが,その動きはカーテンのそれよりも速い.また,出現時間がとても短い.出てきたと思っても,すぐ消えてしまう.形自体はカーテンのような感じの他に雲のようにぼやぁっとしたものもあるが,やはりカーテン状の方が綺麗だ.オーロラが出るときは音が鳴るという人もいるが,みんな騒いでしまってそれを聞くどころではなかった.

しかし初日に見られなかったときはどうしようかと思ったが,ちゃんと見ることができてとてもよかった.-20℃の中で何時間も(?)我慢した甲斐があったというものだ.これで今夜からぐっすり眠れる.