字が読めない
今日はフランスへと旅立つ.この朝食もこれで終わりかと思うと名残惜しいはずがない.
手早く用意を済ませ,Waterloo駅から国際列車ユーロスターに乗り込む.非常にパスポートのチェックが甘い気がするがEUならではなのだろうか?出入国の判子すら押してくれない.しかし島国に住んでいると電車で異国に行けるというのは,なんとも不思議な感じだ.さすがに国際線ということはあって,車内はとても綺麗だ.なかでFloating IslandとChocolate Pancakesを食べると5pあまったので英樹に恵んでやる.これでポンドはすっからかんになった.心置きなくロンドンっ子からパリっ子へ変身できる.
気が付くと長いトンネルを抜けている.ということはここはフランスか?何の確証も実感もなかったが通過駅の駅名を見てフランスだということを確認.何とも風情がないものである.ロンドンを出てから3時間ほどでパリに着く.結構近いものだ.駅の売店でFisherman's Friendを発見.チップ用の小銭をゲットする意味も込めてため買いしておく.
しかしフランスである.看板の文字が読めない.英語が書いてあるところもあるがそう多くない.国際線の駅でこうだから,これからの移動が思いやられる.と思っていたら,早速ピンチ.ホテルのあるRepublique駅まで地下鉄メトロで行こうとしたのだが,切符の自販機の使い方が分からない.文殊の知恵で対抗するが,歯が立たない.しょうがないので人がいる窓口へ.ところがどっこいここでも通じない.結局,偉大だったのはボディーランゲージ.指でさしたら一発だ.
予約しておいたホテルHIBISCUSに着くと3人部屋が空いてないので他のホテルへ行ってくれと飛ばされる.おいおい,マジですか?飛ばされた所は,見かけのずいぶんぼろいホテルでフロントに人が一人いるだけ.ロビーといえるものもない.部屋の鍵をもらうが,「部屋はダブルベッドで離せないよ,ふふっ」とギャグを飛ばしてきた.結構お茶目なおじさんである.エレベーターを降りると,なんと真っ暗だ.どうやら廊下の電気は自分でつけるらしい.しかも3分ぐらいで自動的に消えてしまう.フランス人は妙なところでケチだ.しかし部屋に入ると中身はまあまあである.どうやらフランスのホテルというのはどこもこんなもんらしい.
少し休んで3人で街中に出る.オペラ座として知られる,オペラ・ガルニエへ.ここは中もたいして見れるところがない.足早にマドレーヌ教会へ移動.教会というよりはギリシア神殿のような建物だが,非常に好みである.中でお決まりのロウソクに火をともす.
そしてマリーアントワネットがギロチンされた,コンコルド広場へむかう.オベリスクや8人の女神像を眺めながら,処刑の記念碑を探す.歴史上の人物が処刑された場所に立っているというのはなんとも妙な気分だ.また,ここでフランスの交通事情に遭遇.車はみんな恐ろしく飛ばすし,歩行者も平気で信号無視.なんといっても車線がないという適当さ.フランスとは恐ろしい所だ.
シャンゼリゼ大通りを端から端まで歩く.途中,凱旋門がだんだんと近づいてくる様はなんとも趣深い.凱旋門に着く.と,どうやら上に上るらしい.これは上ってみるしかない.上ってみるとなかなかいい眺めである.外から見るよりも高く感じる.ここを中心に放射状に道路が伸びているのがいい.気分はまるで「All roads lead to Rome.」である.
次にエッフェル塔に行くことにした.行く途中で夕飯を食べたのだが,ここで一騒動.英樹がユッケの様な物を注文したのだが,店のおじさんは私達がそれを生と知らないと思ってる.何回も何回も「これは調理してないんだよ」と繰り返す.運ばれたときも心配そうに見ていた.結局,英樹がそれを平らげたのを見て安心したようだ.
エッフェル塔に上る.途中まで階段で上るコースもあるが,下が透け透けの階段なんか恐ろしくて上れるはずがない.しかしさすがにパリの名物,それなりに遅い時間なのにとても込んでいる.頂上に着くまでには随分並んだが,途中にエッフェル塔の歴史なども書いてありなんとか時間は潰せる.だが,上る価値は十分.エレベーターで頂上に着いたときはすでに真っ暗だったが,パリのいろいろな所がライトアップされていてとても美しい夜景が拝める.しかし高い.さっき高いと思った凱旋門ですら小さく見える.頼りない手すりに寄りかかって下を見ると気を失いそうになるぐらいだ.かなりビビっていたが,それなりに楽しんだ.パリに着たら一度は上っておくべきだろう.恐らく夜の方が綺麗だと思う.
気が付くともう 12 時を過ぎている.帰りに乗ったメトロはどうやら終電らしい.ちょっと今日は頑張りすぎた.
しかし一日はまだ終わらない.フランスで最大の壁,風呂にぶち当たる.普通こういうホテルのバスルームはトイレも一緒で,バスタブの中でシャワーを浴びる.そのとき外が濡れない様に仕切りのカーテンのすそをバスタブの中に入れるのだが,なんと仕切りのカーテンがない!ついでに,シャワーをかける所もない.このまま浴びたら便所もびちょびちょになってしまう.そのくせ床には排水能力がないようだ.どうしろというのだ.試行錯誤の末たどり着いた方法は,バスタブに正座してちょろちょろ浴びるというものだ.空しい.これはあまりにも空しい.しかしどうしようもなく,なんとか頭を洗い風呂を出る.こればかりは日本が懐かしい.
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