台湾の最南端を極める

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今日の目的地は墾丁.台湾の最南端を極める.

しかし墾丁まで行く電車は無いので,高雄からはバスで行かなければならない.電車で高雄に到着すると,ここも嘉義並に客引きが多い.中には「台北行こう」と言うタクシーの運ちゃんもいたが,高雄からタクシーで台北に行く人なんているのだろうか?

そしてここからはバスに乗るのだが,墾丁までの直通バスは無いのでまずは恒春まで行く.ところがこのバスの乗り心地が最悪.道が悪いのかどうか知らないが,やたらボンボン跳ねる.乗り物酔いしやすい人は絶対乗らないほうがいい.そんなバスに揺られること2時間,やっと恒春に着く.

恒春は暑く,日本の真夏の様だ.さすが南国,などと感心している場合ではない.墾丁行きのバス乗り場がどこだか分からないのだ.誰かに訊こうにも周りに人はほとんどいないし,ガイドブックにも恒春の地図は無い.どこに行っていいか分からずウロウロしていると,一緒に降りた新婚さんらしきカップルがバスの運転手と話している.どうもチャイ語で墾丁への行き方を訊いてるっぽいので,そのカップルの後について行くと無事バス停に到着.凄い小さなバス停だ….これは気が付かない.バス停からしてそんな感じなので,運転手に行き先を告げるのですら一苦労.結局,運転席の横に停車地一覧があったので,ゴールデンフィンガーを使ってしまった.

恒春から墾丁は近く,バスで15分ぐらい.墾丁国家公園のゲート前で降りる.まずはホテルを決めなければならないが,英樹の要望で墾丁賓館というホテルを探す.最初はホテルの場所が分からず,スクーターに乗った客引きや日本人の客引きに声を掛けられながら右往左往.しばらくして実はバスを降りた公園のゲートを中に入った先にあることに気付く.つまりバスを早く降りすぎたのだ.

ゲートから公園の入口までは,両側を森に囲まれた4.5kmの上り坂が続く.しかしバスはしばらく来ないので,歩いていくしかない.まぁ,少し歩けば着くだろうと思っていたが,なかなかそれらしき物が見えてこない.もちろんこんな歩道の無い道を歩いているのは私達だけだ.

太陽がギラギラと照りつける中,重い荷物を持って1kmくらい上ると横手に牧場が見えてきた.道を聞こうと近づくが,そこにいたのは大量のお子様達….しかし他に人もいないので,しょうがなくその子達に道を訊くかと思っていると先に向こうから声をかけてきた.「こんにちは」と日本語で挨拶してくるので凄いなと感心していると,突然その中の一人が「Monkey!」と叫んで私の後ろの木を指さす.「何だ?」と思って指の方向を見るが何もいない.???と思ってその子を見ると「non,no~n!」と首を振っている.このくそがきゃぁ!騙しやがったなぁ!

その子達の話じゃ,目指すホテルは確かにこの先にあるとのことで一安心.別れを惜しみながらも再び歩き始めるが,相変わらず周りの風景は木ばかりで建物の影すら見えない.暑さと荷物で汗だくになりながら歩いていると,前からバスが下りて来た.運転手の顔をよく見ると,なんと乗ってきたバスの運ちゃんだ.向こうは「はぁ?」という顔で私達を見ながら横を通りすぎて行く.うげぇ….絶対「何だこいつらは?」と思ってるよ….そりゃそうだ,降りたはずの客が,こんな車しか通らない様な道をバスを追いかけるようにして上っているんだから….もう少しバスに乗っていればこんな目に会わなかったのにと思いながら上り続けると,今度は後ろから車が来た.後部座席に座っている子供が窓から手を振って「He~llo~~!」ってさっきのガキじゃねぇか!「乗っけてくれぇ~」という私達の心の叫びも,辺りに虚しく木霊するだけだった.

ホテルに到着したのは3kmの道のりを30分掛けて上った後.3kmというとたいした距離に聞こえないかもしれないが,炎天下の上り坂を重い荷物を担いで歩くのはかなり疲れる.

ホテルに着いたので部屋を取らねばいけないが,英樹が「こういうホテルは平日2割引してくれるんだよ」と言うので彼に交渉してもらう.すると「3600元の4人部屋を2200元にしてもらったよ!」と自慢げに戻ってきたが,その部屋はダブルベッド×2.首相ホテルの反省が全く活きていない.エキストラベッドを入れてもらおうにも無いと言われたので,もちろんこの愚行の責任を取って英樹が床に寝ることが決定.部屋はさすがにベッドがでかいし,テラス付きで海も見える.1人でダブルベッドに寝られる私と敬之にとってはいい部屋だ.ホテルからゲートを出るシャトルバスもあるので,毎回苦労して上ってこなくても済むことも発覚.良かった,良かった.

一休みして,4.5km地点の墾丁国家公園に行く.ホテルは3km地点なのだから残り1.5km.荷物が無いので10分程で爽やかに到着.公園の入口前に料理屋を発見し,昼飯を食べていなかったことに気付く.ところが近づいてみると店の雰囲気がちょっとおかしい.メニューは無いし,椅子は全て上げられている.そういえば周りに人気も無いし,駐車場もガラガラ.今はシーズンオフなのだろうかと思ったが,一応店のおばさんに訊いてみることにした.ところが返ってきた言葉は「あぁっ!」.…….貴様,なにもんだ?

気を取り直して公園に入る.やっぱり中はお客が少ない.というか,他の客は誰もいないぞ?それはさて置き,公園内を歩くと森林の中を散歩しているようで気持ちがいい.ダラダラと暑い中を歩いて来たのでなおさらだ.中には巨木や崖,鍾乳洞等いろいろあるのだが,それぞれにそれらしい名前が付いていて結構面白い.全体的な規模は大きくないが,一通り廻るとそれなりに見応えはある.中には,遊歩道の両脇に植木鉢を並べたり,温室があったりとNational Parkの割には人工感が高い所もあるがそのくらいはご愛敬だ.

公園の中心には展望台があり,そこでやっと食べ物にありつくことが出来た.熱狗と可楽雲泥冰を注文.熱狗はその名の通りホットドッグと思わせといて実はアメリカンドッグで,可楽雲泥冰とはコーラのフローズン.アメリカンドッグとフローズンは日本で見かける物と同じだったが,ケチャップとマスタードは色も味も別物でちょっと不気味だ.英樹はソフトクリームを買ったので一口貰ったが,これも日本の物とは別物.なぜかキャラメルの味がするし,恐ろしいほど甘い.台湾はどこに行っても甘いものばかりだ.

ホテルに一旦戻り,今度は台湾最南端の岬,鵝鑾鼻に向かう.そこは遠いのでシャトルバスではちょっと無理.そこでフロントにタクシーを呼んでもらったのだが,来た車はなぜかVOLVO.お値段はちょっと高めで1人いくらと,どうやらタクシーとは違うらしい.しかし高いだけはあって乗り心地は最高.高雄からのバスとは雲泥の差だ.運転手さんもサービス精神たっぷりで,走りながらいろいろ説明してくれる.そんな快適なドライブを楽しみながら鵝鑾鼻公園へ到着.VOLVOとはここでお別れと思ったが,運ちゃんはここで待っていると言う.帰りも使ってもらいたいのだろうが,こっちも帰りの足を探すのは大変なのでありがたく待っていてもらうことにする.

鵝鑾鼻は灯台を含む太平洋に面した公園となっている.その灯台からの風景が台湾八景の1つと数えられているだけあって,さすがに眺めのいい所だ.ここは物売りも多く,観光客も墾丁公園よりは多い.久しぶりに観光に来たことを思い出させてくれる場所だ.敬之は土産物屋で絵葉書の値段を訊いて「たけぇよ!」とぶち切れていたが,緑も綺麗でいい場所だ.遊歩道を歩いて行くと,海に出る.太平洋だ.海岸は砂浜ではなく岩場だが,とても綺麗で泳ぎたい位だ.しかしもう公園がしまる時間なので早く VOLVO に戻らねば….

帰りはホテルまで戻らず,途中で降ろしてもらう.墾丁で一番大きなホテル,凱撒大飯店で夕食を食べる為だ.ちょっと高そうな広東料理だが,こっちに来てからあまりお金を使ってなかったので1回くらいはいいだろう.当然の如くここもほとんどお客がいない.それならばゆっくりさせてもらおうと,注文を決めるのに掛かった時間なんと20分.店の人も呆れていただろう.怪しい料理なども頼んでみたが,どれもおいしい.夜はずっと屋台だったので,ちゃんとした食事は久しぶりだった.

帰りのシャトルバスまではまだ時間があるので,そこら辺をうろついてみる.この街はとても小さく,メイン通り一本で生きている.その通りを外れると明かりすらない.コンビニは多いが,なぜか土産屋と合体しているという不思議な所だ.そこでいろいろ買いこんでホテルへ引き上げる.明日の朝も早い.