色あせた晩餐

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朝,何も食べずにホテルを出る.なぜなら寝坊したから.行き先はサンタ・マリア・デッレ・グラッツィエ教会.ミラノに来たからには,やはり「最後の晩餐」を見ておかなければ….

しかしここは入場人数を制限しているらしく,教会の前はすでに長蛇の列.待てども待てども列は進まない.どうやらこれは予約してくるべきものらしい.鑑賞は15分交代で一度に25人しか入れないのだが,予約している人がくるとその分25人の枠が減る仕組み.つまり予約している人が来ると当日並んでいる人はなかなか入れないのだ.こんなことならマックでなんか買ってくるんだったと思いながら,一枚の壁画のために腹を空かしながら待つこと1時間半,やっと入ることができた.

中はずいぶん厳重な感じで,クリーンルームに入るような扉を抜けて,やっとご対面.写真もフラッシュ禁止と箱入り娘のよう.修復が終わって色鮮やかによみがえったと言われていたが,それでも色あせた感じがする.修復前だったら,汚い壁画にしか見えなかったかもしれない.

サウンドガイドをききながらフンフンなるほど….ところが15分という短い鑑賞時間は,恐ろしいことにサウンドガイドを聞き終わることすらできなかった.1時間半も待ったのだからもっとゆっくり鑑賞したかったのに….

そして朝食兼昼飯をとって,ドゥオモへ.昨日は外から見ただけなので,今日は中へ突入してみる.中はとても広く,普通の教会が細長い感じをしているのに対して,幅広い.ステンドグラスもカラフルだし,宝物庫も悪魔が封印されていそうな箱があったりとなかなか.しかし一番印象的だったのは建物の上.大概こういうところは塔に上れるようになっているが,ここで上れるのはなんと屋根の上.傾斜のある屋根の上を歩けるのは珍しくていい.外から見ると綺麗に見えるドゥオモも,上から見ると修復が適当だが気にしない.尖塔の先端にある金色のマリア像も間近に見ることができて,ちょっとお得な気分だ.

スフォルツェスコ城に向かう途中,フローズンのメンタを食べる.メンタとはただのミントのことだが,あまりにも鮮やか過ぎる緑.当然,味も鮮やか.二度と食べません.

スフォルツェスコ城の中は博物館になっているのだが,時間的にOUT.残念.城を突っ切ってセンピオーネ広場で一休みする.すると横にいた黒人集団の1人が,「シガー?」と訊いてきた.英樹が間の抜けた感じで「はあ?」と答えると,むこうは「わっはっはー」と大笑い.ちょっとむかつく.

余裕を持ってお金を変えておこうとしたが,残念ながら銀行は開いてない.そこら辺の両替商を探索してみるが,円が結構上がっている模様.一ヵ月前に替えたときと比べて,15%ぐらいアップしている.いいときに来たもんだ.

そして夕食.またピッツェリアでパスタとピザ.下調べをして店に向かったのだが,入ろうとした店の前で店の兄ちゃんがウロウロしていて入りづらい.意を決して中に入ると,お客が誰もいない….ちょっとびびったが出てきた料理は割とおいしかった.

帰りに英樹が,マックで帽子がついたセットが買いたいと駄々をこねる.イタリアのマックはエスプレッソがあったので,私はそれだけ頼んで横で見ていると,英樹のもとには帽子セットが5セットも….おまえはいったい何を頼んだんだ!?無事に4セットは返品されたが,とても寒々しいヤツだ.

そして昨日と同じスーパーに買い出しに行くと,駅で日本人バックパッカーと遭遇.「地球の歩き方を見せてくれませんか?」ということだったが,もう外は真っ暗.この時間に着いてこれからホテル探しとはつわものだ.私はプラムとオレンジを買ってホテルに帰る.